日々進化し続ける美容業界において、エイジングケアは永遠の課題とされてきました。シミ、シワ、たるみなど、お肌の悩みは人によって千差万別。年齢とともに出てくる悩みを全て解決するには、莫大な時間や費用がかかります。そこで、そのような悩みを解決する一筋の光が差し込みました。
それは、「CiRA」とパルファン・クリスチャン・ディオールの研究開発施設である「LVMHリサーチ」との共同研究です。今回は、CiRAとLVMHリサーチとはそもそもどのような機関なのか、そしてその研究内容はどのようなものなのか、などをご紹介していきます。
アンチエイジング
アンチエイジング(anti-aging)とは、「抗老化」や「抗加齢」のことを言います。これは美容に限ったことでなく、幅広い医学の分野で次のように定義されています。
アンチエイジング医学の定義
「元気で長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学である」
これは、年齢を重ねることで病気になったとしても、肉体的・精神的に全体的に元気であり、バランスの取れた状態に保たれていることが重要との考えがベースにあるのです。
これまでのアンチエイジング対策
では、これまではどのようなアンチエイジングが効果的とされてきたのでしょうか。
- 適度な運動
→血流促進による毛細血管の増加、新陳代謝の活性化
- 規則正しくい食事
→血糖値の急激な上昇を防ぎ、食べ過ぎを防ぐ
- 年間通してのUVケア
→シミ、シワを防ぐ
- 規則正しい睡眠サイクル
→体内時計を正すことで肌の再生を助ける
しかし、加齢による身体の衰え(骨折、ガン、脳卒中など)を止めることはできません。そこで今回、iPS細胞を用いた研究によって様々な角度からアンチエイジングに対してアプローチしようというのです。
CiRAとは?
CiRA(サイラ)とは、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所です。「iPS細胞の臨床応用」を目的に2010年に設立されました。
約30の研究グループでは、基礎研究から再生医療、創薬、生命科学と医療の開拓、研究環境の整備などiPS細胞を中心とする最先端の研究が行われています。
◆2030年までの目標◆
1. iPS細胞ストックを柱とした再生医療の普及
2. iPS細胞による個別化医薬の実現と難病の創薬
3. iPS細胞を利用した新たな生命科学と医療の開拓
4. 日本最高レベルの研究支援体制と研究環境の整備
LVMHリサーチとは?
LVMHグループの研究開発組織で、パルファン・クリスチャン・ディオールの化粧品のためのすべての研究と技術・製品開発を推進しています。20年以上幹細胞について研究を行い、皮膚常在菌や時計遺伝子、神経の老化などでも長年研究を重ねてきています。
そしてこれまで、17の新規知見と約55本の論文発表、そして世界でも有数の研究機関との共同研究を行ってきました。
今回、より幹細胞研究を進化させていくためにCiRA(サイラ)と共同研究を行う運びとなったそうです。
iPS細胞とは?
iPS細胞は2006年に誕生した新しい多能性幹細胞です。人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化します。
再生医療や、病気の原因を解明し、新しい薬の開発などに活用できると期待されています。
そして現在、6歳から81歳まで様々な年齢の日本人の皮膚細胞からiPS細胞の作製に成功しており、エイジングケアが必要な年齢にも対応できると考えれます。
iPS細胞の特徴としては、「体のあらゆる細胞に分化する多能性」、「ほぼ無限に増えていく増殖能」、「どんな人の細胞からも作れてそのDNAを共有する個別化」という、3つがあるとされています。
iPS細胞とは? | よくある質問 | もっと知るiPS細胞 | 京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)
今後どのような研究をしていくの?
加齢がミトコンドリアに及ぼす影響を研究し、皮膚再生の治療法開発を目標としています。また、今回の共同研究では、商品化する製品開発を目的としているのではなく、iPS細胞を用いて幹細胞を特定する基礎研究を行うそうです。
そうして幹細胞研究が進むことで、アンチエイジング研究が進み、成分の効果を検証することにつなげていきたいとのことです。
最終的には、ひとの肌の仕組みをより明らかにすることで、エイジングを緩やかにする手段を見つけられるのかもしれません。
アンチエイジングという言葉がなくなる日が来るのかも
細胞レベルで、しかも個人の肌の状態に合わせてケアできるのであれば、将来的にアンチエイジングという言葉がなくなる日が来るのかもしれません。
いつまでも若く美しい肌で年齢を重ねるのが常識、という未来はもう近づいてきています。