アンナ・カリーナの代表作、「女は女である」と「気狂いピエロ」
◆女は女である(1961年)
「女は女である」は、ジャン=リュック・ゴダール監督の長編第3作目で、初カラー作品です。
ゴダールと結婚したアンナ・カリーナが主演で、「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドと共演しています。
エミール(ジャン=クロード・ブリアリ)は、ストリップ・ダンサーのアンジェラ(アンナ・カリーナ)と暮らしています。
アパートの階下に住むアルフレッド(ジャン・ポール・ベルモンド)との三角関係を描くコメディ映画です。
この映画は遊び心が満載で、ヌーベルバーグを代表する監督のルイ・マル作品の「地下鉄のザジ」主演の子役、カトリーヌ・ドモンジョが出演します。
さらには、「雨のしのび逢い」でジャン=ポール・ベルモンドと共演したジャンヌ・モローに、フランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」についてバーで話すシーンなどもあります。
音楽は、のちに「シェルブールの雨傘」を手掛けるミシェル・ルグランで、映画ファンにはたまらない作品です。
この映画でのアンナ・カリーナのファッションは、
・赤いクルーネックカーディガン、黒いストライプタイトスカート、オフホワイトのコート(内側がチェック)とベレー帽、赤いタイツ、黒いローヒールパンプス
・赤いニット、タータンチェックスカート、黒いベルト、青のベレー帽とカチューシャとタイツ
・白いファー付きの青いワンピース、青いリボン、黒いコート、黒いタイツ
・ツインテールの髪、白いパジャマやネグリジェ
・緑色のギンガムチェックのエプロン
赤・青・白のトリコロールカラーでまとめているのが特徴的です。
カラー作品なので、ここぞとばかりに色使いを楽しんでいるように見受けられます。
これにブルーのアイメイクやまとめ髪がとてもよく似合っています。
白を基調にしたインテリアもとても素敵で参考になります。
◆気狂いピエロ(1965年)
「気狂いピエロ」は、ジャン=リュック・ゴダール監督の長編第10作目で、ヌーヴェル・ヴァーグの最高峰と名高い、フランス・イタリア合作の映画です。
「女は女である」と同じ、ジャン=ポール・ベルモンドと共演しており、ゴダールとアンナ・カリーナの離婚後の作品です。
漫画本・詩・絵画・映画など、さまざまな引用が散りばめられているのが特徴です。
ピエロと呼ばれるフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)は、パリで退屈な結婚生活を送っていました。
そこに、昔の恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)が現れ、南仏へと逃避行します。
破滅的な内容ではありますが、ところどころにミュージカルやコメディの要素が取り入れられています。
この映画でのアンナ・カリーナは、エスカルゴのような左右の巻き髪にネイビーのブレザー・プリーツスカートという出で立ちで登場します。
一転、逃避行中は、赤を基調としたリゾートファッションが中心の着こなしとなります。
・白いレースのノースリーブワンピース、水色のカーディガン
・赤と白のノースリーブのボーダーワンピース、レースの白いリボンで髪をまとめる
・アーミージャケット、アーミー帽、赤のインナー、赤のチェックのパンツ、青のソックス、ベージュのスニーカー
・白いTシャツ、赤いクルーネックカーディガン、ベージュのニットを肩掛け、青のパンツ、船長帽
・赤のフリル付きニットワンピース
・ボーダーのタンクトップ、赤いタイトスカート
このように、夏に取り入れたいシンプルで開放的なファッションや、アーミー柄の着こなしも参考になります。
いまだに根強い人気のある強いインパクトのある作品ですので、ぜひ鑑賞してみてください。
モノクロ映画で味わう、「はなればなれに」と「アルファヴィル」
◆はなればなれに(1964年)
「はなればなれに」は、ジャン=リュック・ゴダール監督とアンナ・カリーナの独立プロ第1作目の犯罪映画をもとにしたモノクロ映画です。
「パルプ・フィクション」で有名なクエンティン・タランティーノ監督や、ファッションデザイナーのアニエス・ベーがこの映画のファンだということで知られています。
日本では2001年に初めて公開されました。
冬のパリで、推理小説マニアの二人の青年の親友同士が英語学校で出会ったオディルに一目ぼれします。
この3人がオディルのおばの家の大金を盗む計画を企てるという物語です。
ミシェル・ルグランの音楽に合わせて3人がダンスするシーンはとても印象的で有名です。
コメディタッチからどんどん手に汗握るシリアスな場面が増えていきます。
この映画のアンナ・カリーナは、ぱっつん前髪でリボンで髪を後ろで束ねています。
ピーコート、ニット、タータンチェックスカートという、スクールガールファッションです。
シンプルでべーシックなファッションの参考になる一本です。
◆アルファヴィル(1965年)
「アルファヴィル」は、ジャン=リュック・ゴダール監督が手掛けた、モノクロのSF映画です。
1984年が設定で、撮影はパリで行われており、独特の作風になっています。
人工知能アルファ60に支配された近未来星雲都市のアルファヴィルは、一切の感情が排除されています。
探偵のレミー・コレクション(エディ・コンスタンティーヌ)がこの都市に降り立ち、支配者に立ち向かうというストーリーです。
都市を支配する博士の娘のナターシャ(アンナ・カリーナ)はレミーによって次第に人間の心を取り戻していきます。
この映画でのアンナ・カリーナは、レースのブラウスに黒のワンピース、ツーピースなど、シックな装いです。
そこに真っ白なファーがあしらわれた黒いコートを羽織っています。
シックな装いにレースやファー使いが目を引くファッションとなっています。
冬のおでかけのファッションの参考にしてみてはいかがでしょうか。
「アンナ」と「メイド・イン・USA」から学ぶ、カラフルなファッション
◆アンナ(1966年)
「アンナ」は、ピエール・コラルニック監督によるフランス国営放送の初のカラーのテレビ映画となったミュージカル・コメディです。
音楽監督は、「夢見るシャンソン人形」の作詞作曲や、ジェーン・バーキンのパートナーだったことで有名なセルジュ・ゲンズブールで、出演もしています。
イギリスの有名女優、ローリング・ストーンズのミックジャガーの恋人だったことでも有名な、マリアンヌ・フェイスフルの歌唱シーンもあります。
映像も音楽も1960年代が詰まっていて、当時のポップ・カルチャーをたっぷりと味わうことができる作品です。
広告代理店の社長のセルジュ(ジャン=クロード・ブリアリ)は、偶然見かけたアンナ(アンナ・カリーナ)に一目ぼれしました。
街に写真広告を出して探しますが、実はアンナは、丸い黒ぶち眼鏡をかけて、セルジュの会社の彩色部で働いていました。
セルジュはそれに気付かずに、探し続けますが、アンナを名乗る女性たちに追われるばかりです。
アンナもセルジュに惹かれていきますが、果たして二人が本当の意味で出会える日は来るのでしょうか。
この映画で印象的なのは、なんといっても黒ぶち眼鏡姿のアンナ・カリーナです。
赤いニット×青いチェックスカートや青いニット×黄色のプリーツスカートの上に着ている、ビニール素材のコートも目を引きます。
マルチボーダーのニットやキャミソールワンピース、黒いニット・パンツに赤いマフラーといった装いがあります。
さらには、メンズサイズの赤いシャツにボーダーのニーハイソックスなど、かわいらしいコーディネートが盛りだくさんです。
シーンごとにくるくると変わるファッションを楽しんでみてください。
◆メイド・イン・USA(1966年)
「メイド・イン・USA」は、ジャン=リュック・ゴダール監督による、実際の事件をもとにした、ハードボイルド・タッチの作品です。
ゴダールとアンナ・カリーナが組んだ最後の作品になります。
登場人物に映画監督の名が採用されていて、ドリス・ミゾグチという女性の登場人物の名は溝口健二監督から来ています。
ドリス・ミゾグチは小坂恭子という女性が演じており、弾き語りを披露しています。
昔の恋人を訪ねてアトランティック・シティ(架空の都市)を訪れた記者のポーラ(アンナ・カリーナ)でしたが、恋人は既に亡くなっていました。
その謎を探るために街に出るポーラでしたが、犯罪に巻き込まれたり、事件の容疑者にされたりしていってしまいます。
1966年頃は、アメリカのヒッピーから始まった、サイケデリックファッションの全盛期でした。
その影響もあってか、アンナ・カリーナは、極彩色のチェックやストライプのニットワンピースを着ています。
マルチカラーのブロックチェックや、イエローとオレンジのボーダー、パープルとブルーの斜めボーダーの五分袖でミニスカートのものです。
この上に、探偵のようなベージュ色のベーシックなトレンチコートを羽織っています。
そして、髪は癖を生かしたセミロングヘア、足元は白いローヒールのパンプスです。
衣装と背景の植物や建物との色の対比が美しく、話の内容はとても難解ですが、ずっと観ていたくなる作品です。
アンナ・カリーナの映画とそのファッションについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
これらの作品には、DVDやリバイバル上映を行っている映画館で出会うことができます。
斬新なストーリーとともに、唯一無二の可愛らしさを持ったアンナ・カリーナの魅力をぜひ味わってみてください。