ジーン・セバーグから学ぶ、おしゃれなフレンチファッション
ではまず、1950年代後半に、「悲しみよこんにちは」と「勝手にしやがれ」で一躍有名になった、ショートカットが印象的なアメリカ出身の女優、ジーン・セバーグのファッションをご紹介します。
ジーン・セバーグの名を世に知らしめた作品は、「悲しみよこんにちは」です。
フランスの作家のフランソワーズ・サガンの小説が原作の、1957年に公開されたアメリカ映画です。
ジーン・セバーグが演じるセシルの、南フランス、コート・ダジュールでの避暑地での出来事を描いています。
自身の自由を奪われそうになった焦りから、父と再婚しそうな女性を妨害し、悲しい結末を迎えてしまう物語です。
ヒロインであるジーン・セバーグのベリーショートのヘアスタイルは、「セシルカット」として大流行しました。
この映画では、パーティーに明け暮れる現在がモノクロで、避暑地での回想シーンがカラー映像となっています。
避暑地でのジーン・セバーグのリゾートファッションは、モノクロとの対比でとても色鮮やかに感じられます。
◎別荘では・・・
◆赤い水着の上にシャンブレーのシャツの裾を結ぶ
◆シャンブレーのシャツ・白いストレートパンツ
◆白いプロヴァンス風のオフタートルのノースリーブ・グリーンのサブリナパンツ
◆セーラーカラーの白い半袖シャツ・柄のサブリナパンツ
◆ライムグリーンのギンガムチェックのノースリーブシャツ・グリーンのショートパンツ
◎パーティでは・・・
◆白い花柄のホルターネックのノースリーブのワンピース
海辺ではこのようなリラックスしたファッションがとても映えます。
そして、ボーイッシュなヘアスタイルには、女性らしいワンピースを合わせると甘さと辛さが丁度よく、目を引くことが分かります。
そして、ジーン・セバーグの代表作といえばやはり、「勝手にしやがれ」です。
ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の旗手である、ジャン=リュック・ゴダール監督のフランスでの作品で、1959年に制作されました。
ジャン=ポール・ベルモンドが演じる警察に追われるミシェルと、アメリカ人のガールフレンドのジーン・セバーグ演じる駆け出しの記者のパトリシアの、すれ違いながらの恋愛を描いた作品です。
この映画は、公開から半世紀以上も経過している現在でも大人気で、シャンゼリゼ大通りを二人で歩くシーンは、ポスターでもよく見かけます。
ジャン=ポール・ベルモンドは、ハンフリーボガードに憧れたギャングファッションに咥え煙草の姿がとてもダンディーです。
そして、ジーン・セバーグは、ベリーショートのヘアスタイルで、フレンチカジュアルをさらりと着ています。
◆ヘラルド・トリビューンのハイネック三分丈リブシャツ・黒パンツ・ローファー・巾着袋
◆ボートネックの七分袖ボーダーシャツ・膝丈のプリーツスカート・ステンカラーコート・サングラス・ソックス・ローファー
◆大きな襟のボーダーの半袖Aラインワンピース・白いハイヒールのパンプス・サングラス・巾着袋
特に、ボーダーTシャツやロゴのトップスといった、フレンチファッションの王道のシンプルでカジュアルなアイテムの合わせ方がとても参考になります。
ジーン・セバーグは、この2つの作品で、コート・ダジュールでのリゾートファッションと、パリでのパリジェンヌファッションといった、シンプルでシックなフレンチファッションを見事に着こなしています。
彼女の魅力を存分に引き出したこの2つの作品を堪能してみてください。
カトリーヌ・ドヌーヴがお手本!パステルカラーとトレンチコートの着こなし
続いて、フランスの名女優であるカトリーヌ・ドヌーヴの代表作、「シェルブールの雨傘」のファッションをご紹介します。
「シェルブールの雨傘」は、1964年公開のジャック・ドゥミ監督によるフランスのミュージカル映画です。
ミシェル・ルグランの切ない旋律の音楽はとても有名で、今でもよく耳にします。
雨傘店の娘のジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と自動車整備工のギィ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)は、将来を誓いあう仲でした。
しかし、戦争やすれ違いにより、別れを余儀なくされ、それぞれ別の家庭を持ち、数年後に再会するというストーリーです。
若い頃のジュヌヴィエーヴのファッションは、パステルカラーや原色の洋服にブロンドヘアがとても愛くるしいです。
そこにトレンチコートを羽織ると大人びた雰囲気が加わり、ピリッと引き締まり、絶妙な甘辛バランスとなります。
数年後の大人になったジュヌヴィエーヴは、黒いファーコートに身を包み、一転シックな装いになり、その対比が見ものです。
◆ピンクのカーディガン・ピンクのコート・グレーのプリーツスカート
◆水色のカーディガン・水色のワンピース・黒いリボン・ベージュのトレンチコート
◆赤いタートルセーター・前髪はセンターパーツ・サイドの髪で耳を隠し、束ねたヘアスタイル
きれいな色のカーディガンやニット+トレンチコートの組み合わせには参考にしたいものです。
さらに、この映画に出てくるようなかわいい傘をさせば、雨の日のおでかけも楽しくなります。
同じくミュージカル映画である「ロシュフォールの恋人たち」では、実姉のフランソワーズ・ドルレアックと共演し、双子の役を演じました。
こちらもカラフルでとてもかわいい作品です。是非、合わせてご覧ください。
そして、「昼顔」という映画では、一転、つかみどころのないクールな妻の役を演じています。
イヴ・サンローランの衣装を身にまとったシックなモノトーンの着こなしにも注目です
アニー・ホールルックが有名!ダイアンキートンのマニッシュファッション
最後にご紹介するのは、「アニー・ホール」のダイアン・キートンのチノパンが印象的な、マニッシュなスタイルのファッションです。
「アニー・ホール(Annie Hall)」は1977年に制作された、アメリカの映画です。
コメディ作家として活躍していたウディ・アレン監督の作品で、一時期パートナーでもあった、ダイアン・キートンを起用しており、本人も出演しています。
アカデミー賞などの数々の賞を受賞した名作です。
ニューヨークとロサンゼルスを舞台にしたラブストーリーで、二人の出会いから別れまでを、回想シーンを交えながら描いています。
神経質なコメディアンのアルビー・シンガー(ウディ・アレン)と、歌手志望の明るい性格のアニー・ホール(ダイアン・キートン)は、正反対な性格だからこそ惹かれあいます。
しかし、やがて価値観の違いからすれ違いが多くなり、それぞれの道を歩いて行きます。
二人は、テニスコートで出会い、その帰りにアニーの愛車でアルビーを送ることになります。
その際、アニーのアパートに寄り、ベランダでワインを飲みながらお互いを探りながら会話をします。
花壇にワインのボトルを無造作にさして乾杯するシーンが、とてもナチュラルで映画であることを忘れてしまうほどです。
これらのシーンのアニーは、黒のフェルト帽とサングラス、白シャツ、ベスト、メンズサイズのベージュのチノパンという装いです。
そして、ネクタイを締め、ラルフローレンの服がとてもなじんでいます。
さらに、カゴバックにダンロップのテニスラケットを無造作に入れています。
このようなファッションは、「アニー・ホール・ルック」と呼ばれ、大ブームとなりました。
帽子を取り、癖のあるロングヘアーがなびくシーンなどにも引き付けられます。
さばさばした性格とマニッシュなスタイルと女性らしさが一体となり、唯一無二の魅力があふれています。
場面ごとに、シルバーのバレッタで後ろをふんわり留めたタマネギヘアだったりもします。
サングラス、帽子と、スカーフなどの小物使いにも注目です。
また、着回しや重ね着がとても上手です。
そしてこの着こなしは、アニーを演じるダイアン・キートン本人のセンスとのことで驚きます。
◆黒のタートル、パープルのキャミソールワンピース、茶系のスカーフ、茶のクラッチバック
◆ストライプのシャツ、ベージュのベスト、白の柄物スカーフ、白ワークパンツ、ツイードのジャケット
◆白い半袖シャツ、ベージュのワイドパンツ、黒いスカーフ
◆黒いジャケット、チェックのシャツ、眼鏡、高い位置でウエストインして黒いベルト、オリーブ色のパンツ
◆黒のタートル、朱色の細いストライプの半袖オールインワン、紫色のペイズリー柄のスカーフ
◆黒いチュニック、ベージュのチノパンツ、黒いストライプのスカーフ、サングラス
◆黒のタートル、白いチェックのシャツワンピース、紫色のペイズリー柄のスカーフ
◆ベージュのレースの付き白のワンピース、ウエスタンブーツ
このように、ベーシックなアイテムを中心にして、小物使いや組み合わせで多くのコーディネートを生み出しています。
特にチノパンは、最近また人気のアイテムですので、この映画を参考にしながら、自分なりに取り入れてみてはいかがでしょうか。
ダイアン・キートンは、「ゴッド・ファーザーシリーズ」、「マンハッタン」、「恋愛適齢期」など、多くのヒット作に出演しており、現在も活躍中です。
変遷をたどってみるのもいいかもしれません。
さて、3人の女優の映画作品についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか?
まだご覧になっていない方は、是非、この機会にDVDなどで鑑賞してみてください。
半世紀も前の映像ということにまず驚かれることかと思います。
映画でおしゃれのセンスをどんどん磨いていきましょう。