アパレル・ファッション TREND MEDIA

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アパレル製品はどのようにして商品化され、完成するまでにかかる期間は?

 

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洋服が手元に届くまでの行程

私たちの生活になくてはならないもの、それは衣・食・住の3本の柱と言われています。

 

当たり前のように着ている洋服ですが、どうやって商品化され、店頭に並び私たちの手元に届いているのかご存知ですか?最近ではシルエットが特殊なものや、デザイン性が高いものなど洋服の形も様々な形が見受けられます。

 

アパレル製品は通常、約1年先の商品を企画して製造をスタートさせています。その流れは大きく4段階に分けられています。


1、素材選び
始めに素材選びがあります。国内の産地や生地仕入先に出向いて新しい素材が開発されていないか、来年の生地の流行はどのような傾向にあるかを調べます。海外の素材を選ぶ場合は、海外の展示会に参加してファッションのトレンド・素材情報を集めるとともに、海外素材を専門に扱う生地仕入先に次の企画に合う物がないか検討していきます。

 

ブランド側の、こんな生地を作って欲しい、こんな生地を探している、という要望をヒアリングしながら、進めていきます。商談で良い生地に出会い、新しい商品が企画されることもあります。

 

各ブランドは、どの生地が何メートル必要なのか、商談を通して生地メーカーにオーダーします。生地メーカーといっても、扱っている素材はメーカーによって特色があるため、ブランドは少なくとも5社から10社以上の生地メーカーと商談を行い、主な材料となる生地を調達します。

 

例えば、デニムはこのメーカー、綿素材は別のメーカー、ナイロン素材はまた別メーカーにお願いするといった具合です。

生地以外にもレースやリボン、ボタンなどの副資材も調達しなければなりません。この時点ではまだ、サンプルを作る為の少量の見本品をオーダーします。

材料をキープしたところでいよいよ製造がスタートします。

 

2、デザイン決定と工場にサンプル依頼

ある程度の傾向がつかめた段階で、デザイナーがスタイル画を作成します。

具体的なデザインを決定し、縫製仕様書を完成させたら、工場にサンプルを依頼します。


縫製仕様書というのは、工場にこういう物を作って下さいという指示を出す為の設計図です。縫製仕様書はデザイナーではなく、仕様書作成を専門にしている、パタンナーという人が作ります。


デザイナーがパタンナーを兼任している場合もありますが、多くは別々に作業します。

パタンナーの仕事は、デザイナーがデザインした洋服を、実際に洋服として着た時にイメージ通りになるように、形にしていく仕事です。

 

また、実際の寸法、着心地、デザインが構造上実現可能かどうなのかも含めた形、シルエットの美しさなども考慮しながら縫製仕様書にデザインを落とし込んでいきます。

 

パタンナーは、デザイナー以上に経験と技術がとても必要です。縫製指示書が出来たら、工場にサンプルの依頼をかけます。

 

3、サンプルの作成と検討会

洋服の試作サンプルが工場から無事に出来上がってきたら、縫製仕様書の指示通りに作られているか、イメージ通りに出来ているか、売れそうなものに仕上がっているかどうか、社内で厳しいチェックを行います。

 

サンプル作成では、実際に使用する生地を用いて行ないます。この時に、縫製時に起こりうる問題点やシルエットを各種検討したり、パターンを修正したりしていきます。

 

最初のサンプル時点でOKになることは非常に珍しく、様々なチェックを行った後、次のサンプルの依頼をかけます。サンプルが仕上がってきた時点で、商品の検討会が行われます。

 

本当にこの商品は売れそうか、大幅な変更が必要か、実際に出来上がって来たものを見て検討会を行います。サンプルのみで企画が無くなったり、別のアイテムに変更になることも非常によくあります。

 

サンプルをチェックする工程の中でも、より売れる商品になるようにデザイナーやパタンナーの厳しい目によって変更や修正が繰り返さます。

 

4、アパレル製品のお披露目、展示会

修正や変更をくり返しながら、最終サンプルが上がってくる時期に合わせて、各ブランドは展示会と呼ばれる洋服のお披露目会を行います。展示会は通常、発売されるシーズンの約4~5ヶ月前に行われます。

 

展示会にはブランドやメーカーが取引先やバイヤーを呼んで意見交換をしたり、商品を購入してもらうための商談の場でもあり、スタイリストやファッションプレス関係の人への商談の場でもあります。また生地メーカーやブランドの宣伝効果を期待される著名人なども招待され、一般の店頭発売に先駆けて商品を見ることができます。

 

展示会では訪れたゲストがその場で商品をオーダーすることができます。

その為、各ブランドはゲストからの注文数や反応を見たり、展示会での評判を参考に生産枚数などを決定し、最終的にどの商品をどれくらい工場に発注したらよいかを決定します。

 

展示会後に百貨店やデベロッパー納入先のバイヤー、社内の営業やファッションアドバイザー(FA)の意見を参考に多少修正が入ることもあります。

 

展示会が終わり、修正後はいよいよ生地メーカーや資材メーカーに最終発注を入れます。工場に資材が到着したら、後は無事に商品が納品されるのを待つだけです。

 

縫製工場は中国生産が大半殆どですが、手の込んだものや短い納期のものなど、日本国内で生産するものもあります。店頭に入る2~3ヶ月前に生産が終わっているものや、期中企画品等で直前に出来あがるものなど様々です。


それから仕上がった製品を、針など混入していないか、指示通り出来上がっているかなどを、検品する検品業者。倉庫まで運んでくれる物流業者、荷受から保管、お店などへの配送手配をおこなってくれる倉庫の人々などたくさんの人が関わり、完成したアパレル製品は、発売のシーズンになると一斉に店頭に並んでいるのです。

 

このように、ひとつのアパレル商品が出来上がるまでには多くの工程があり、デザイナーやパタンナーのこだわりや、生地・素材メーカーとの連携により、良い商品が世の中に送り出されていくのです。

 

ブランドにとって、企画デザインから店頭に商品が並ぶまで、様々な工程を経て1年以上の期間を要しエンドユーザーの私たちの手元に届けられています。作り手の思いを想像しながら、商品を手にとってみると考え深いものがありますね。

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ファストファッション型の製品開発のプロセス

ファストファッションは、流行を取りいれた低価格な衣料品を、短期間に大量生産・販売するブランドのことを指しますが、ブランドはさまざまな形態が存在しています。代表的なのはSPA型ブランドです。


SPAとは、商品企画から製造・販売までを同一のブランドで一貫して行う業務形態のことであり、製造小売業とも呼ばれています。代表的なSPA型ファストファッションには、H&MZARAユニクロなどがあげられます。

 

まず,ファストファッションでは,実シーズンの直前あるいは実シーズンに入ってから製品 を企画・生産しているため,その製品開発プロセスは既存のプロセスよりも大幅に短く,一般 に企画から販売まで 1ヵ月程度だと言われています。

 

SPA型ファストファッションの中でも、H&MZARAはトレンド重視、ユニクロはスタイル重視など、ブランドによって違いがあります。ハイブランドは、上流の顧客をターゲットとした一級品のブランドであり、世界に通用する製品を扱っている一方で、ファストファッションは一般の顧客をターゲットとして低価格のブランドです。

 

そのため、高級志向の顧客もファストファッションブランドを購入していることも多く、ファストファッションの中には、そのような顧客をターゲットとした商品も展開している企業もあります。

 

ファストファッションは移り変わりの激しい流行に応えるために、商品を迅速に製造しなくてはなりません。製品が店頭に並ぶのも最大で 1ヵ月間 程度であり,その前に売り切れることも多々あります。

 

とはいえ,同じデザインの追加生産は原則的に 行われないため,常に売り場や製品の鮮度は高く保たれていると言えます。それゆえファッション誌に広告を掲載 するという従来の宣伝方法を取らず,代わりに店舗のショーウインドウや入口付近のスペース に最新製品を見せ,消費者を店頭に引き付けようとしているのがわかります。

 

ファストファッションは多くのデザイナーに設計を任せるとともに、設計した製品を迅速に店舗に並べなくてはなりません。


ファストファッションの多くが製造小売業(SPA)の形態を採用しているのはそのためです。低価格で販売するということは、製造費を少しでもコストカットするということです。

 

それ故、ファストファッションの企業の多くは発展途上国に進出しており、社会情勢に合わせて製造拠点を変えることも珍しくありません。海外に製造拠点があると、何かと問題が起こることも多いため、ファストファッションは現地情勢を分析する力も必要になります。

 

その他にも、原材料や運搬費、製造費のコストをなるべく低く抑える努力が、それぞれのファストファッション企業で行われています。ファストファッションは、ただ商品を製造するだけでなく、リーズナブルかつスピーディに商品を提供することが求められます。

もちろん、ファストファッションとして成功するためには、商品としてのファッション性、ブランド性も大切です。また、環境問題への配慮も、ファストファッションに求められる価値の一つです。
このように、一言でファストファッションといっても、企業が乗り越えなくてはならない製造工程は非常に多いのです。

 

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アパレル企業の問題と課題

家庭からゴミとして出される衣料品は年々増加しているという事実もあり、ファストファッションの浸透が環境問題に影響を及ぼしているニュースを見かけます。「早さ」を求めたファストファッションの代償と言えるでしょう。

 

ファストファッションによってもたらされる問題の一つとして、人権問題があります。つまり低価格を実現するために生産の段階で、発展途上国の労働者が酷使されており、大量生産の傍ら、低賃金で重労働を強いられるアジアの人々の労働・安全環境の劣悪さが問題視されています。

 

生産工場のある途上国の労働環境は劣悪なことが多く、ぎりぎりその日暮らしの生活を送れる「最低賃金」は支払われるが、将来に向けての生活設計を可能にする「生活賃金」が支払われることは少ないからです。

 

また、昔の服に比べるとデザインや縫製がシンプルでいいので、腕のいい職人が職を奪われ、技術の継承が行なわれにくいマイナス面も問題になっています。

 

そしてアパレル企業によってもう一つ深刻な問題を引き起こしているのが環境問題です。

 

インドネシアのジャバ島を流れるチタラム川は、世界でももっとも汚染されている川のひとつとして知られています。

チタラム川の上流にある工場の68%が衣服類を生産している繊維工場なのです。

着ている洋服の背景には、川や人々の生活が犠牲になっていると考えると胸が痛みますね。

 

安くておしゃれな物が溢れており消費者にとっては嬉しいことばかりにも思えますが、環境問題 が浮き彫りになった今、消費者は衝 動買いをする前に本当に必要か判断する必要がありそうです。

 

これからはオーガニック・コットンなど環境負荷の低い素材の使用、フェアトレードなど児童労働の撤廃や人権に配慮した生産・流通過程を目指す「エシカル(倫理的、道徳的)・ファッション」に注目されるのではないでしょうか。

 

企業は既にユニクロのよう にリユース・リサイクルする活動などの対策を取っています。H&Mは2013年より行ってきた古着の回収を行い、ファッション業界が環境に与える負荷を少なくするとともに、水、石油、綿などの天然資源を節約しようという試みを実践している企業でもあり、今後更なる環境問題対策 の取り組みが求められるでしょう。

 

多くの企業が低価格やトレンドを手に入れた今、環境問題対策は勿論、機能性 や品質の向上などの付加価値を備えた企業、社会貢献に取り組み力を入れる企業こそが、今後のアパレル企業の中心として牽引していくのでしょう。