繊維の種類と特徴について◆天然繊維
では、まず、繊維の種類と特徴について見ていきたいと思います。
繊維については、家庭用品品質表示法の、「繊維製品品質表示規程」の改正が2017年(平成29年)4月に施行され、表示方法に変更がありました。
・ズボンの裏生地を表示事項に追加する。
・マフラーやスカーフ・ショールの表示事項に「家庭洗濯等取扱い方法」を追加する。
・毛布の縦糸の表示の追加。
・指定外繊維の表記を無くし、植物繊維・動物繊維など、消費者が分かりやすいよう表示する。
さらに、2018年(平成30年)4月からは、帽子についての繊維の種類と洗濯表示(取扱い表示)の記載が義務付けられました。
繊維は大きく分けて、天然繊維と化学繊維があります。
最初に、ナチュラルな風合いで人気の、天然繊維についてそれぞれ説明します。
◎植物繊維
◆綿(コットン)
綿花から作られる繊維で、日本の衣料のほぼ4割を占めています。
肌触りがよく、吸湿性・吸水性もよく、Tシャツ・ワイシャツ・タオル・ジーンズ・トレーナーなど、幅広く使用されています。
また、染色性もよく、様々な染料が使われています。
気軽に洗濯が出来て、アイロンの熱にも強く、耐久性にも優れています。
ただ、縮みや、しわになりやすく、日光で変色しやすいです。
◆麻(ラミー/リネン)
麻は、植物表皮の内側や葉茎から採取される繊維のことを指し、20種類程の種類があります。
その中でも、日本工業規格 (JIS) で、「麻」として流通させてよいのは、「ラミー(苧麻)」と、「リネン(亜麻)」の2種類のみとなります。
家庭用品品質表示法でも、この2種類のみ、麻と呼ばれ、ロープや袋などに使用される、丈夫な「ヘンプ」は、上記以外の植物繊維と分類されます。
麻は、乾きが早く、とても涼しく、春夏の衣料にとても適しています。
また、耐久性は生地の中でも一番で、使い込む程に味が出るのも人気の理由です。
ラミーとリネンの違いについては以下の通りです。
【ラミー(苧麻 読み方:チョマ 別名:からむし)】
主にアジア諸国で使われていた麻で、繊維が太く、ハリやコシがあり、白く、自然な光沢があります。
毛羽感があり、高級な雰囲気を醸し出しています。
日本では、古くから、和装の麻織物に使用されていました。
現代でも、和服や浴衣などに用いられています。
他には、ジャケットや、コート、バッグなどもラミー素材のものが多いです。
ちくちくとしやすく、しわになりやすいのが難点です。
【リネン(亜麻 読み方:アマ)】
ヨーロッパで古くから愛用されていた麻で、繊維は細く短く、やわらかく、もともとは少し黄色がかっています。
下着やシーツなどでよく使用されていたことから、リネンという言葉がそのままシーツや寝具を指す言葉にもなりました。
ランジェリーも、フランス語で、リネン(Linen)とラーンジュ(linge 意味:製品)から、ランジェリー(lingerie)になったそうです。
吸水性に優れ、水を含むと強度が増します。 汚れに強く、とても丈夫。
繊維が細くてちくちくせず、肌触りがやさしいという特長があります。
様々な衣類や、バッグ、寝具、カーテンなどに用いられています。
◎動物繊維
◆毛(ウール)
家庭用品品質表示法では、動物の毛であれば、全て「毛」と表示してよいことになっています。
代表的なものが、羊毛(ウール)ですが、カシミヤ・アンゴラ・モヘア・アルパカ・キャメルなども毛となります。代表的な2種類ついて紹介します。
【羊毛(ウール)】
羊の毛から作られた繊維です。よく使用されているのは、メリノ種の羊のウールです。
伸縮性と保温性があり、秋冬の衣料によく用いられています。
染色性もよく、弾力があり、型崩れしにくいです。
縮みやすく、虫害にあいやすいのが難点です。
【カシミヤ】
カシミヤ山羊の毛から作られた繊維です。
柔らかく、軽量で、上品な光沢を持ち、しなやかで、「繊維の宝石」と呼ばれています。
1匹の山羊からとれる毛の量はわずかで、コート1枚作るのに30頭分が必要になります。
それほど希少な繊維で作られた衣類は、とても肌ざわりがよく、素肌に触れてもチクチクしません。
デリケートなので慎重に扱う必要があります。
また、羊毛と同様、虫害にあいやすいので注意が必要です。
◆絹(シルク)
絹は、蚕(カイコ)の繭で作られ、タンパク質でできた繊維です。
18種類のアミノ酸で構成されており、人間の肌に近い成分です。
天然繊維では唯一の長繊維で、細く、繊維断面が異形の為、光が散乱し、独特の光沢感を持っています。
染色性が最もよく、染料を選びません。
熱伝導率が低いので、夏は涼しく、季節を問わず快適に過ごせます。
綿の約1.5倍の吸湿性・放湿性があると言われており、静電気が起きにくいのも特長です。
摩擦に弱く、日光で変色してしまうので、丁寧に扱う必要があります。
繊維の種類について◆化学繊維
では続いて、機能的で進化を続ける、化学繊維についてです。
◎再生繊維
木材パルプや竹や綿を溶かして、繊維として再生したものです。
染色性がよく、シルクに似た光沢があります。
◆レーヨン
紙と同じ、木材パルプが原料で、絹に似せて作った繊維です。
レーヨンは、光線(ray)と、綿(cotton)を組み合わせた言葉で、絹に似た光沢とドレープ性を持っています。
独特のとろみがあるので、レーヨンを使った衣類は、とても上品でエレガントな印象になります。
水に弱く、しわになりやすいのが難点です。
◆キュプラ
レーヨンに似た風合いを持ち、スーツの裏地によく使用されます。
キュプラは、コットンリンターと呼ばれる、綿の種子に生えている短い繊維を使用しています。
吸湿性、放湿性があり、静電気が起きにくく、レーヨン同様の光沢としなやかさを持っています。
摩擦に弱く毛羽立ちやすいのと、水に弱いので洗濯は慎重に行う必要があります。
クリーニングに出すのがベストです。
◆ポリノジック
レーヨンと同じく、木材パルプで作られており、日本で研究開発された繊維です。
レーヨンの重合度(分子量)を上げ、耐水性・耐アルカリ性に優れています。
色落ちがしにくく、親水性なので、油汚れが落ちやすいです。
上品でしなやかで、ワンピースやシャツなどによく用いられています。
こちらも、しわになりやすいのが難点です。
◆テンセル・リヨセル
木材パルプを原料にアミンオキサイド系水溶液を使い製造した、精製セルロース繊維です。
テンセルは、イギリスのコートルズ社が開発した商標名です。
リヨセルは、オーストラリアでも同様のものが作られており、こちらはリヨセルといいます。
環境にやさしい溶剤を用いており、土に還ります。
柔らかな風合いで、吸湿性・速乾性に優れています。
しかしながら、収縮しやすく、摩擦により白く変色しやすいデメリットも。
家庭用品品質表示法では、以前は指定外繊維の部類に入っていましたが、再生繊維へと分類されるようになりました。
◎半合成繊維
天然繊維を原料とし、化学反応させて高分子をつくり、作られた繊維です。
化学品の成分が半分になるため、半合成繊維と呼ばれています。
◆アセテート
木材パルプのセルロース成分に酢酸を作用させてつくる合成繊維です。
絹のようなしなやかな感触、毛のような風合いと豊かさも持っています。
プリーツセットが可能で、フォーマルウェアやカーテンなどによく使用されます。
染み抜きに使われる、アセトンやシンナーには溶けてしまうので注意しましょう。
◆トリアセテート
アセテートの酢酸度合いを変えたもので、形態安定性、耐熱性がアセテートよりも増しています。
様々な繊維と混紡で使用されています。
親水性は低下するので、水にぬれても乾きやすいのが特長です。
◎合成繊維
石油などを原材料にし、化学的に処理した繊維です。
繊維の表面がなめらかで、強度があり、虫害を受けにくく、洗濯機で気軽に洗えるものが多いです。
◆ナイロン
世界で初めて作られた合成繊維です。
1935年アメリカで開発され、3年後に商品化されました。
つやがあり、ハリが強く、摩擦に強い特長があります。
また、吸湿性が低いために洗濯が簡単で、カビや虫害になりににく、保管がしやすい繊維です。
日光で変色しやすく、静電気が起きやすいのが難点です。
◆ポリエステル
合成繊維の代表であり、ナイロンの次の強度と耐摩擦性を持ちます。
リーズナブルな価格なのにもかかわらず、とても耐久性にすぐれ、しわにもなりにくく、幅広い衣料品に利用されています。
繰り返しの洗濯に強いので、ユニフォームやワイシャツなどに多く用いられています。
静電気がこちらも起きやすく、再汚染もしやすいので洗濯機に入れる際は注意が必要です。
◆アクリル
アクリロニトリルという石油から作られていますが、ウールに近い風合いを持ち、セーターなどに多く利用されています。
ウールとは違い、縮みが少なく、虫害に強いのが特長です。
毛玉が出来やすいことと、熱に弱く変色しやすいこと、また、静電気が起きやすいのが難点です。
◆ポリウレタン
1930年代にドイツで開発され、1950年代に、工業的に使用されるようになりました。
天然ゴムに似た弾性糸で、5倍~10倍に伸縮します。
合成皮革のコートや、スポーツウェアなどに利用されています。
安価でとても手に入れやすく、着心地の良さで人気です。
ただ、劣化しやすく、2~3年で寿命が来てしまいます。
新しくなった洗濯表示
繊維についてのそれぞれの特徴について、新たな発見などありましたでしょうか?
では最後に、新しくなった洗濯表示について見ていきましょう。
洗濯表示の改正は、繊維の表示方法より少し前の、2016年(平成28年)12月に施行されました。
そして、国際規格であるISO3758と日本のJISが統一され、海外の衣料もそのまま流通するようになりました。
主な変更点は以下になります。
・世界共通で使用されている、ISO(国際規格)の記号と同じになった。
・日本語表示がなくなり、「・」や「-」の記号を使用。
・記号の種類が増えた。(タンブル乾燥・酸素系漂白剤・クリーニング業者のウエットクリーニングなど。)
・表示は取り扱い方の上限をあらわす。
・記号であらわせない参考情報は、簡単な用語で付記。
では、記号の見方についてを説明していきたいと思います。
①5つの基本記号
【家庭洗濯】「洗濯おけ」・・・洗濯機も手洗いも洗濯おけのマークに。手洗いは手が差し込まれているイラスト。
【漂白】「三角」・・・線のないものは酸素系・塩素系漂白剤どちらもOK。線2本は酸素系漂白剤OK。
【乾燥】「四角」・・・タンブル乾燥は〇と「・」の組み合わせ。
吊り干しは縦線「|」で、平干しは横線「-」。2本は濡れたままの意味。斜め線は陰干し。
【アイロン】「アイロン」・・・アイロン底面温度が、ドット1個「・」が110℃、ドット2個「・・」が150℃、ドット3個「・・・」が200℃まで。
【クリーニング】「円」・・・Pはパークロロエチレンなどの溶剤、Fは石油系溶剤。Wはウエットクリーニング(水洗い)が出来る。
②付加記号と数字
【強さ】基本記号の下に「-」を付加。線なしは通常で、増えるほど弱い。
【温度】≪記号によるもの≫ 基本記号の中に「・」を付加。増えるほど温度が高い。
≪数字によるもの≫基本記号の中に「40」などの数字を付加。
【禁止】基本記号に×を組み合わせる。
この組み合わせで、6分類22種類だった表示が、7分類41種類に増え、
洗濯方法がより分かりやすくなりました。
誤った洗濯方法で、大事な衣類をだめにしてしまった・・・
という、悲しい失敗も軽減できそうです。
お気に入りの衣類を洗濯する時は、是非、タグをしっかりと見ておきましょう。
いかがでしたでしょうか。洋服1着1着の繊維の特徴と、正しい扱い方を知っておくと、
より一層おしゃれを楽しめますし、接客の際にも役立ちます。
是非、いま一度、再確認してみてくださいね。