ファッション販売における人材計画の設定 - 役割分担 -
店舗の運営上、欠かすことができないことが、人材計画です。
いかに販売計画が優れていたとしても、それを実行する人材がいなければ絵に描いた餅になってしまいます。また、スタッフが成長実感を持っているかどうか、実際に成長しているかどうかは良いお店づくりには欠かせないことです。
「人材の育成」ということになると、それだけで本が何冊も出版されるほど奥の深いテーマです。
ここでは、すべてのスタートとなる
何をどのレベルまでできるようになってもらうか≒スキル向上
誰に何を任せるか≒役割分担
に絞って人材計画を立てていきます。
育成と役割分担は表裏一体です。
忙しい店舗での教育となるとOJT(On the Job Training=職場内育成)の比率が高まります。
したがって、出来るようになってもらいたい仕事をうまく任せることで育成につなげていくかが、ポイントとなります。
例えばこのようなケースを考えてみましょう。
Bさんには将来の店長候補として、スキルを身につけてほしいと考えています。したがって目標設定と売上管理の目線を身につけるために、朝礼時の目標の落とし込みを担当してもらいます。
一方でAさんは入店してからの日がまだ浅い状態。したがってまずは一通りのオペレーションを一人で完結できるようになってほしいため、Bさんサポートの下、まだやっていないXXの業務を担当してもらいます。
OJTという形式になると、どうしても日々の業務に追われてしまい、育成はおざなりになりがちです。確実に実行していくためのポイントは、
「毎日少しずつでも良いので、日々のワークスケジュールに組み込んでしまう」
ことです。
「1日10分×2名ずつを必ず実行する」など、無理なく継続できる時間を確保し、計画的に実行することが重要です。
店舗で実際に発生した事象ベースのみでのOJTをやっていくと、どうしても人によって行動のムラが出てしまいます。
最初に覚えさせるべきこと(何をいつまでにどのレベルまで)を箇条書きでも良いので書き出し、一つひとつ順番に実行していきます。その際、その一覧表を本人に渡しておき、OJTの進捗状況を自分で管理してもらうのも一つのやり方です。
OJTを受ける本人からすると、「できることがこれだけ増えた」ということが目に見えて分かり、自信がつきます。また、OJTを実施する側も管理が楽です。
尚、OJTを行う際には、なぜやる必要があるのか(目的)を納得させ、定着を促すためにも、以下のサイクルを回すことが重要です。
OJTサイクル
【背景や主旨の説明】目的と目標を共有し、納得感と意欲を持たせる
【率先垂範】基準(手本)を示す
【実行】本人にやらせる
【フィードバック】示した基準と照らし合わせて出来不出来を明確にする
【フォロー】「できるようになったこと・できなかったこと」をそのままにしない(必要に応じ、フォローアップをする)
上記サイクルをうまく回すためには、やるべきことを明確にし、計画的に管理していくことが必要です。
ファッション販売における人材計画の設定 - 業務計画 -
次に、店舗運営においてもう一つ重要なことが、「業務計画を立てる」ことです。
複数の人が関わる店舗では、どうしてもムリ・ムダ・ムラが発生しがちです。問題点を洗い出し改善するための期限と方法を決めることが、スタッフの満足度向上や活性化にもつながります。
ここでのポイントは、問題点の洗い出しの段階から、スタッフを参加させることです。
参加意識を高めておくと、その後の具体的な改善のためのアクションに移った際の役割分担がスムーズに進み、かつ、「やらされ感」が薄まります(自発性が高まります)。
すべてをスタッフに丸投げしてしまうと、現実味のない提案ばかりが出てしまう可能性もあるため、ある程度落としどころや優先順位を整理する必要はありますが、改善のスピードを上げるためにも、有効な手法です。
スタッフの力量や意識レベルと照らし合わせながら、うまく巻き込みましょう。
また店舗の課題を解決するためには、自分自身の上司(スーパーバイザーやエリアマネジャーなど)の巻き込みや、本部との調整が必要になるケースも多くあります。これも店長の重要な役割の一つです。
第1回でも説明しましたが、会社内の他部署へ良い影響力を及ぼすことも大切な仕事の一つです。お客様にとって最高のサービスを実現するために、また、スタッフが働きやすい環境を創るためにも、店舗を取り巻く様々な関係各者と良い関係性を創ることが欠かせません。
講師の紹介
株式会社エムオーティクリエイション
代表取締役社長 川内由加
・サービス・マネジメント・コンサルタント
・キャリアカウンセラー
<米国CCE. Inc. 認定GCDF>
・国家資格キャリアコンサルタント
・サービス介助士・認知症介助士
<公益財団法人日本ケアフィット教育機構>
・英国国立ウェールズ大学院 経営学修士(MBA)
<MBA, The University of Wales, UK.>
・桜美林大学院 老年学修士
<桜美林大学老年学研究科シニアライフ研究会所属>
・経営倫理士
<特定非営利活動法人日本経営倫理士協会 主任フェロー研究員>
・特定非営利活動法人戦略的CSR研究会 理事
1982年 関西学院大学卒業後、株式会社ワールドへ入社。株式会社ワールドで、人事部・タケオキクチ事業部・株式会社ワールドストアパートナーズ(ワールドグループ販売会社)の代表取締役を経て、2001年にエムオーティクリエイションを設立。