「お買い得になっております」は万能ではない
入店しやすい雰囲気をつくるには、ただ声出しをするだけではなく、内容を工夫することも大切。たとえば定番文句のひとつである「いらっしゃいませ、どうぞご覧くださいませ」は、あまりにも多用されている言葉なので、ときには耳障りに聞こえてしまうもの。むしろ入店を促すために大切なのは、お客様が思わず耳をそばだてて聞きたくなり、聞いてよかったと思えるような内容を声に出すことだと著者は指摘しています。
いい例が、パン屋でよく聞く「ただいま、焼きたてです」といった言葉。そこには、「さめないうちに、早く買おう」と思わせる力があります。そこで同じように、これを自店のお得な情報に置き換えてみればいいということ。
お客様から嫌がられない「アプローチ」のタイミング
接客を始めたばかりの販売員にとって、ファーストアプローチは最初にぶつかる難関。だからこそ、お客様にとって心地よいタイミングをつかむことが大切だと著者は記しています。そして、まずお客様に振り返ってもらうためには、立ち位置が大切だとか。入店したお客様の後ろをついてまわったり、真正面から近づくと驚かせることになるので、お客様にそっと横から近づいておくこと。近くでさりげなく商品を整えていると、お客様の様子を観察しやすくなるというわけです。
次の難関は、いざお客様が手に取ったらどうするか。手に取った瞬間にすかさず声をかけると逆効果なので、お客様が商品を手に取ってから、心のなかで3~5秒程度の深呼吸を。「手に取ってすぐ」ではなく、「手に取って3秒してから声をかける」ことを心がけると、お客様の反応も柔らかくなるといいます。
もし、深呼吸している間に商品を戻してしまったとしたら、それほど商品に興味がなかったと考えるべき。あるいは、いまは接客しないでほしいというサインかもしれないので、無理に話しかけるよりは、次に商品を手に取るタイミングを待った方がいいといいます。
「よろしければ」はよろしくない
第一印象は、お客様との会話を盛り上げるか否かを左右するもの。そこで、立ち位置やタイミングと同じように意識すべきは「アプローチワード」だと著者。アパレルのケースなら、もし次のような言葉を使っている場合は、アプローチワードの見なおしが必要だそうです。
1.よろしければ、お手に取ってご覧になってみてください。
2.よろしければ、ご試着できますので。
3.よろしければ、お鏡ございますので。
どれも接客で馴染みの深い定番フレーズですが、これらはすべて、一方的に行動を強制することになってしまいます。強制的な印象を和らげる「よろしければ」をつければいいというものではないので、お客様の外見、行動を観察することが大切だということ。